湿度という尺度は、一般的には「相対湿度」のことを指しています。空気には気温ごとに水蒸気を含むことができる限界(飽和水蒸気量)が決まっていて、現在の水蒸気量が飽和水蒸気量の何%になるかを示しているのが、相対湿度となります。
もう一つ、一般的ではありませんが「絶対湿度」という尺度もあります。1m×1m×1mの空間に含まれる水蒸気自体の量を重さで示します。単位はg/m3となります。
室温5℃、湿度49%の部屋で加湿せずに暖房を使用した場合、室内の湿度はどのようになるでしょうか?
答えは、室温15℃で湿度26%、室温25℃で湿度14.5%となります。
室温上昇で飽和水蒸気量が増加することで、相対湿度は低下します。
ちなみに、室内の絶対湿度は3.33g/m3のままです。夏だと絶対湿度で20g/m3を超える日も多いので、冬が乾燥しているのは間違いないですね。
先ほどの例のように、室温が25℃になっても湿度が低いと乾燥してきます。具体的には、皮膚から水分が蒸発して気化熱を奪い、体温を低下させますので体感温度が低くなります。(体感温度約21℃)
とりあえず設定温度を上げたいところですが、設定温度の1℃上昇は消費電力約10%アップとなりますので、経済的ではありません。また、性別や年齢、着衣などで体感温度はかわってきますので事務所や店舗などの温度設定は難しくなります。
快適な室内環境の冬の目安は、室温18℃~22℃、湿度45%~60%となっていますが、今回は最適な設定温度と湿度を考えるために、PMV(予想平均温冷感申告)を計算することで、PPD(予測不快者率)を導き出してみたいと思います。
PMVは平均的な寒暖の感じ方を予測する指標で、デンマーク工科大学のファンガー教授が1967年に発表して1994年にISO7730になっています。活動量・着衣量・風速・放射温度・室温・湿度から算出します。+5(暑い)~-5(寒い)となります。
PPDは何%の人がその環境に不満かを予測する指標となります。
ISOの標準では、PMVが±0.5以内・PPD10%以下を推奨しています。
室温5℃、湿度49%の部屋を加湿暖房した時の、最適な設定はどこになるのでしょうか?
事務所を想定して計算してみましょう。
室温5℃湿度49%
:およそ100%の人が不快(PMV -3.59, PPD 99.9%)
室温15℃湿度26%
:およそ52%の人が不快(PMV -1.52, PPD 51.8%)
室温25℃湿度14.5%
:およそ11%の人が不快(PMV 0.56, PPD 11.5%)
室温21℃湿度55%
:およそ5%の人が不快(PMV -0.07, PPD 5.1%)
赤文字以外は、先ほどの温湿度推移から計算した値となります。赤文字の項目は温湿度の最適化した値となります。
設定温度が低くても、加湿することでPMVとPPDの改善が可能なことがわかりました。
これから温度設定を検討するときは、湿度も考慮して検討することが大事ですね。
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